2021年度国防授権法(National Defense Authorization Act)において、孔子学院(Confucius Institute)プログラムを実施する米国大学は、国防総省(Department of Defense)から助成を受けることが禁止されたが、この助成制限免除を検討するにあたって、国防総省が考慮すべき基準に関する報告書「米国高等教育機関における孔子学院(Confucius Institutes at U.S. Institutions of Higher Education)」が、米国科学工学医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine)から1月10日に発表された。孔子学院は、中国政府が資金を提供して全世界で展開する語学・文化センターで、2000年代後半~2010年代前半までは米国大学100校超のキャンパスにおいて開講されていた。しかし、学問・表現の自由の侵害及びスパイ活動・知的財産窃盗などの可能性について連邦議会が懸念を表明したことにより同学院の閉鎖が相次ぎ、2022年12月時点で同学院プログラムが開講されている米国大学は7校のみで、このうち2校は国防総省から科学研究助成を受給している。2021年度国防授権法では、国防総省が、助成制限免除基準の検討に当たり、米国アカデミーから諮問を受けることが義務付けられていることから、今回の報告書作成が行われた。本報告書を作成した委員会は、孔子学院が学問・表現の自由に影響を及ぼした事例は見られたものの、非機密レベルではスパイ活動・知的財産窃盗に関与した証拠は発見されなかったとしている。本報告書で提案された、国防総省が検討すべき基準は以下の通り。
• 米国ホスト大学は、キャンパス内で開講される孔子学院を当該大学の正式機関として位置づけ、学問の自由等の米国大学における主な価値を孔子学院が尊重した上で運営を実施。
• 米国ホスト大学は、情報・データ・研究及び物理的な安全保障において、該当する全ての国防総省要件を充足。
• 米国ホスト大学は、孔子学院のカリキュラム・教員・教科書・教材・プログラム上の意思決定・研究助成に関する管理権を完全に保有。
• 米国ホスト大学は、孔子学院に外国法に基づく契約・合意事項を作成させない状況を確保。
• 米国ホスト大学は、孔子学院の受託・財務面を適切に監督。

なお、本報告書は、<https://nap.nationalacademies.org/read/26747/chapter/1>から閲覧可能。

National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine, New Report Proposes Criteria the Department of Defense Could Use to Determine Whether a College or University that Hosts a Confucius Institute May Receive DOD Funding
https://www.nationalacademies.org/news/2023/01/new-report-proposes-criteria-the-department-of-defense-could-use-to-determine-whether-a-college-or-university-that-hosts-a-confucius-institute-may-receive-dod-funding